1.本書はどのような書物か

本書は理論社会学の本です。理論社会学は大きく分けると相互行為や社会過程に注目する方法論的個人主義、あるいはミクロ社会学、行為理論と、マクロな構造やシステムに焦点を置く方法論的集合主義に分かれます。本書はそのいずれでもありません。

方法論的個人主義は、個人のみが実在するリアルな対象であるという非学問的な観点にもとづくものです。それはちょうど、重力の概念でいえば、「実在するリアルな対象はリンゴと地球であり、それゆえにそれらは観察可能である。重力は単なる観念にすぎない」という素朴な考えと同じです。

他方で方法論的集合主義は、社会的な対象を固定的な仕方でしか理解できないものです。

本書の方法は現象学や理解社会学の考え方をもとに、社会を「思うこと」、簡単に「思い」という観点から理解しようとするものです。(以下続く)

西欧の名詞中心主義。物。ホモ・クローザス。
「思い」は名詞だが、「思うこと」の略記的表現。

Gender is not a 'thing', a noun, but instead should be regarded as a verb, a series of practices and processes we engage in in relationships with others. Such processes are an organizational feature of the personal and collective social arrangements of institutional life. (Jones et al. 2011 Introducing Social Theory, 2nd ed.:228)

『社会秩序の起源−「なる」ことの論理』


このページでは『社会秩序の起源−「なる」ことの論理』の理解に資する情報を提供しようと思います。

目次

1.本書はどのような書物か